Veeam Softwareの中川です。パートナーやエンドユーザーを対象に、製品トレーニングを提供しています。Veeam Data PlatformのAdvancedエディション以上で提供される監視製品の「Veeam ONE」について、計12回にわたりご紹介します。
2回目:Veeam ONEのインストール, Veeam ONE Clientアクセス方法, 設定メニュー
3回目:Veeam ONE Client – データ保護環境の監視および考察
4回目:Veeam ONE Client – ランサムウェア対策のための事前定義アラーム
5回目:Veeam ONE Client – 悪意ある攻撃者からの設定変更を追跡するアラーム
6回目:Veeam ONE Client – 仮想環境運用時のスナップショットも監視は必須
7回目:Veeam ONE Client – インテリジェント診断にアシストしてもらおう
8回目:Veeam ONE Web Client – アクセス方法, 設定メニュー, ダッシュボードの活用
9回目:Veeam ONE Web Client – スケジュールしたレポートを報告書に流用
10回目:Veeam ONE Web Client – 悪意ある攻撃者からの設定変更を追跡するレポート
11回目:Veeam ONE Web Client – Veeamで実装する暗号化の設定変更追跡レポート
12回目:Veeam ONE Web Client – ジョブを一覧するカレンダー、Veeam Backup & Replication v12で強化されたセキュリティ機能
7回目は「Veeam ONE Client – インテリジェント診断にアシストしてもらおう」です。
「インテリジェント診断」を初めて知る方もいらっしゃると思います。インテリジェント診断は問題解決までの時間を短縮する有効な機能です。私自身はハンズオンラボ環境を提供する会社のサポートの方とやりとりすることが多々あります。サポートに問い合わせてから解決するまでに時間がかかることもありますよね。
既知の問題であれば、インテリジェント診断のアシストによって解決までの時間短縮を計れます。
インテリジェント診断の仕組み
インテリジェント診断は、ログ分析の結果に基づいた推奨事項を示すアラームをトリガーに、解決までの時間を短縮する目的で提供されます。
< インテリジェント診断のコンポーネント >
インテリジェント診断プロセスでは、次の3つのコンポーネントを使用します。
- Signature:Veeamテクニカルサポートによって調査された一般的な課題(issues)に基づいた解決されるべき問題(problem)の定義です
- Veeam ONE agent server:ログデータの分析と署名の更新を担います。Veeam ONEインストール時にエージェントはインストールされます。
- Veeam ONE agent client:ログ収集を担います。エージェントはVeeam ONEへ追加時に自動インストール、またはVeeam ONE Clientから手動インストールが可能です。
インテリジェント診断機能を適切に動作させるためには、Veeam ONEエージェントをインストールするVeeam Backup & ReplicationサーバーにPowerShellモジュールをインストールする必要があります。Veeam Backup PowerShellモジュールの詳細については、「Veeam PowerShell Reference」を参照ください。
< インテリジェント診断のプロセス >
次のプロセスで動作します。図1も併せて参照ください。
- インテリジェント診断のセッションが開始されると、Veeam ONE ServerはVeeam ONE agent clientにコマンドを送信し、Veeam Backup & Replicationからログを収集します。
- Veeam ONE agent clientは圧縮ログファイルを作成し、それをVeeam ONE agent serverに送信します。
- Veeam ONE agent serverは、ログをSignatureと比較することによって、Veeam Backup & Replicationログを解析し、既知の例外やエラーメッセージを検索します。
- 既知の問題が見つかった場合、Veeam ONE Clientはアラームをトリガーし、Veeamテクニカルサポートからの推奨事項とナレッジベースの記事を表示します。
「Veeam ONE Agents」タブ
Veeam ONE Agentに関する設定は、「Veeam ONE Agent」タブで行います。
- 左下のメニューから、「Veeam Backup & Replication」を選択します。
- 左上の「Veeam Backup & Replication」を選択し、「Veeam ONE Agents」タブを選択します。
Veeam ONEエージェントの設定
バックアップサーバ名を右クリック、ショートカットメニューから、「Agent settings…」をクリックします。
「Remediation actions」「Backup log analysis」「ポート番号」の設定を行えます。
< Remediation actions >
有効の場合、仮想インフラとバックアップインフラのトラブルシューティングを自動化することができます。
たとえば、VMの最新のスナップショットサイズがエラーとなる(スナップショットサイズが元の仮想ディスクの20%を超える)場合は、最新のスナップショットの削除を行うスクリプトを実行することができます。
修復のためのアクションは、アラーム設定の「Actions」から行います。「Execution type」の「By Approval (手動)」または「Automatic (自動)」からアクションの実行タイプを選択できます。
修復アクションが事前に定義されているアラームのリストは、「Remediation Actions」を参照ください。
※図4の「Actions:」項目から、準備された「Delete snapshot」ではなく、作成したスクリプトを実行させる「Run script」を指定することもできます。
「Latest snapshot size」アラームのアクションの実行タイプはデフォルト手動設定です。
「Approve action…」をクリック後、アクション(この場合は最新スナップショットの削除)は実行されます。
実行が成功すれば、Statusが「Acknowledge (図5緑色点線枠内)」に変更されます。失敗した場合、アラームはアクティブなままになります。
< Backup log analysis >
有効の場合、Veeam ONEエージェントがVeeam Backup & Replicationログの分析を行います。
デフォルトでは、Veeam ONEエージェントは毎日午前7:00にログ分析を実行するように設定されています。デフォルトのログ分析スケジュールを変更するには、図2のショートカットメニューの「Log analysis schedule…」から行います。
ログ分析実行の詳細については、「Performing Log Analysis」を参照ください。
Signatureの管理
自動署名更新が有効かつVeeam ONEサーバーがインターネットに接続されている場合、Veeamテクニカルサポート Web サーバーに接続し、署名が毎日自動的に更新されます。
自動更新の設定は、Veeam ONE Clientのメインメニュー – 「Settings」 – 「Server settings」 -「Other」から行います。デフォルトは自動更新有効です。
Veeam ONEサーバーがインターネットに接続していない場合は、図7の「Import Signature… (赤色枠内)」から最新バージョンのSignatureを含むファイルを手動でインポートします。
Signatureを更新する場合は、「Update Signatures (青色点線枠内)」をクリックします。
インポートするSignatureは、Veeam Web サイトから、「VeeamONE.Signature.x.x.x.package」ファイルを入手します。
執筆中に次の情報アラームが通知されました。2023年8月1日の累積パッチ情報(KB4420)です。また通知されたアラームについてテクニカルサポートへ問い合わせる際は、「Signature UID (図9の赤線箇所)」を提供することで、調査プロセスが簡素化され、解決時間を短縮することが可能です。
まとめ
サブタイトルの「インテリジェント診断にアシストしてもらおう」の意味がおわかりいただけたのではないでしょうか。既知の情報 / 問題であったとしても、「情報を入手し、ログと比較解析し、問題があれば推奨事項を提示してくれる」というのは、問題解決までの時間短縮の一助になるのではないかと思います。
アシスト機能を活用した結果、重要なビジネスに関わるタスクに時間を費やせていただけたのなら、「インテリジェント診断」をご紹介した甲斐があります。Veeam ONEを運用メンバーの一員として採用(検討)いただけましたら幸いです。
◆参考情報 ※Webブラウザの日本語翻訳機能をご利用ください。
・Veeam Intelligent Diagnostics
https://helpcenter.veeam.com/docs/one/monitor/intelligent_diagnostics.html?ver=120
・How to run scripts correctly with Veeam Monitor client
・Configuration Restore Fails With: “2200N: invalid XML content DETAIL: buffer full” ※インテリジェント診断では、次のKBのPostgreSQLに関する警告アラートも通知されています。