数々の名レースや名馬を世に生み出し、国民的レジャーとして親しまれている中央競馬。その運営を司るのが、JRAの略称で知られる日本中央競馬会(以下、JRA)である。「JRAは、毎週走り続けます。」を経営の基本方針として掲げるJRAでは、年間288日・1日最大12レースを全国の競馬場で開催。その基本方針が示す通り、毎週着実にレースを続けている。 「競馬は非常に公共性の高い事業であるため、情報インフラに対しても極めて高いレベルの信頼性が求められます。我々情シス部門でも、協力会社であるJRAシステムサービス(以下、JRASS)と連携して、信頼性・安定性の確保に取り組んでいます」と語るのは、JRA 情報システム部 システム統括課 課長補佐の佐々木 智範氏だ。
特に人気の高いGIレースでは、一日の売り上げが数百億円規模にのぼる。仮に、勝馬投票券のWEBからの購入や、レース賞金支払いなどに関するシステムにトラブルが発生し、レース開催に影響がでると、莫大な損害が発生することは必至だ。 「競馬はお客様や馬主の方々に加えて、競走馬の生産者や騎手、きゅう舎スタッフなど、数多くの関係者に支えられています。競馬開催を止めないためにも、システムやデータを保護することは非常に重要です」と佐々木氏は続ける。
しかしその一方で、課題もあった。JRAでは、インフォメーションシステムや公式Webサイト、統合DBシステム、競走馬情報管理システム、会計/給与システム、VDI基盤などの主要な基幹システム群をVMware vSphereによる統合IT基盤上に集約しているが、そのバックアップに様々な問題を抱えていた。
たとえば、従来はD2D2T方式によるバックアップを行っていたため、テープへの書き込みに最大10時間もの時間を要していた。しかも、処理の安定性も低く、書き込みが失敗するケースもあった。加えて、サーバ/クライアント/DBのバックアップを別々のツールで行っていたため、運用管理も煩雑化。各ツールのライセンス費用も大きな負担となっていたという。
統合IT基盤が更新時期を迎えたことを機に、同法人ではバックアップ環境の抜本的な改善に着手。ここで選ばれたのが、「Veeam Backup & Replication Enterprise Plus」(以下、Veeam)である。
JRASS システム開発部 統合情報開発課 課長 小城 新二氏はVeeamを採用したポイントを「次期統合IT基盤用のストレージとして採用したPure Storage社から、いいバックアップ製品があると紹介されたのがきっかけでした。実際にデモを見せてもらったところ、GUIがシンプルで非常に分かりやすいと感じました。バックアップの設定もポリシーベースで簡単に行えますから、これまでのようにシステムごとにバックアップ設計を行う必要もなくなります。加えて、ファイルレベルでのリストアが容易に行える点も評価しました」と語る。
前述の通り、競馬は非常に公共性の高い事業である。そのデータをしっかりと保護できる環境が整ったことで、「今後の事業運営に対する安心感も格段に高まった」と佐々木氏は語る。今後もクラウドの活用など、情報インフラの進化を目指す取り組みを進めていくとのこと。Veeamが活かされる場面も、ますます広がっていきそうだ。
日本中央競馬会は、日本中央競馬会法に基づき設置された特殊法人である。公共性の強い法人であることから、農林水産大臣の監督下に置かれている。札幌・函館・福島・新潟・中山・東京・中京・京都・阪神・小倉の10競馬場において、国民的レジャーである競馬を毎週開催しているほか、馬事公苑、競馬学校、競走馬総合研究所、日高育成牧場、宮崎育成牧場、美浦トレーニング・センター、栗東トレーニング・センターなどの本部付属機関の運営も行っている。略称はJRA。
競馬事業を支える業務システムのバックアップに複数の製品を用いていたため、運用管理が煩雑化。バックアップに時間がかかったり、失敗したりといった問題も抱えていた。ライセンス費用も大きな課題となっていたため、統合IT基盤の更新を機に、新たな統合バックアップシステムの導入に着手した。