自動車用の変速機(トランスミッション)を日産自動車はじめ複数の自動車メーカーに供給するジヤトコ。なかでも変速ショックのないCVT(連続可変トランスミッション)は世界トップクラスのシェアを誇る。近年は、モーターやインバー ター、減速機を一体化したe-Axleなど、電気自動車(EV)用部品事業の強化にも取り組んでいる。
「自動車業界は100年に一度の変革期を迎えています。前身から数えると50年以上の歴史を持つ当社では、従来のやり方から脱却して市場競争力を高めるために、デジタルも活用しながら変革を進めています」と同社デジタルソリューション部 部長の土屋敦氏は述べる。
同じくデジタルソリューション部 主担の小林智央氏は、「トランスミッションやe-Axleなどの自動車の主要部品を手掛ける同社にとって、設計、テスト、調達、生産、販売、財務などのデータは重要な資産といえます。事業継続、法令や規格への遵守、品質管理や製品トレーサビリティなどを目的に、以前からデータの保全に注力してきました」と説明する。
これまで同社はアプライアンス型のバックアップ•ソリューションを活用してき必要でサイジングの自由度が低く、投資計画にも影響していた。また、アプライア要となっていた。
ジヤトコは、バックアップに用いていたアプライアンス•ハードウェアのサポートが終了することを機に、バックアップ•システムの刷新プロジェクトを2021年7月にスタートした。新たに定めた要件は次の2点である。
まず、データ容量の増加にスケーラブルかつ柔軟に対応できることを掲げた。対象となるデータ容量は、検討時点で40TB、5年後想定が60TBである。
加えて、物理サーバーもしくは仮想サーバー(VM)として構築されている Microsoft WindowsサーバーやLinuxサーバーのほか、Microsoft SQL ServerやOracle Databaseなど、自社の多様なIT環境に対応できることを要件とした。
また、副次的な要件として、ハードウェアが固定化されスケーラビリティにも影響を与えるアプライアンス製品ではないこと、および、バックアップ先をオンプレミスだけではなくクラウドにも拡張できること、の2点も考慮した。
数社のソリューションを比較検討した結果Veeamを選定した。その理由について土屋氏は、Veeamは物理サーバーと仮想サーバーの両方に対応していること、汎用ストレージで構築できること、クラウドにもデータを保存できること、操作性が優れていること、永久増分バックアップによりデータ量を削減できること、などを挙げる。
同社のITシステムおよびバックアップ系の構成は図のとおりである。Aクラスと 呼ぶミッション•クリティカルな基幹システムに1つのVeeamサーバーを配置。 また、ミッション•クリティカルではないインフラ関連サーバー群とBクラス•サーバー群に対しては3つのVeeamサーバーを仮想基盤単位に配置している。なお、仮想サーバーを含むITシステム全体のサーバー数はおよそ500台で、そのうちVeeamでのバックアップ対象はおよそ200台である。
データの保存先にはNetApp製のオンプレミス•ストレージを使い、冗長構成としている。将来はクラウドのMicrosoft Azure Storageへの保存も計画中だ。
従来のバックアップ•システムからの移行には若干の工数を要したものの、Veeam の導入によって次のようなメリットがもたらされたと小林氏は説明する。