【V12特集:徹底解説】バックアップファイルの移動・コピーについて 

はじめまして、Veeam Softwareでサービスプロバイダー様向けのプリセールスSEをしている 志茂と申します。担当エリアは全国になりますので、いろいろなサービスプロバイダー様にお伺いさせていただくことがあると思います。
その際は、どうぞよろしくお願いいたします。

1.1. はじめに

Veaam Backup & Replication v12(以下、VBR v12)がリリースされました。今回は、VBR v12で新しくサポートされる機能である、バックアップデータの移動とコピーについてお話しさせていただきます。この機能で、想定されるユースケースは以下の通りです。

・リポジトリとして利⽤しているストレージが保守切れとなったバックアップデータを別のストレージに移⾏したい。
・リポジトリが満杯になりそうなので、バックアップデータを別のストレージに移⾏して容量を確保したい。
・NTFSを利⽤しているが、ReFSを利⽤するとディスクの利⽤効率がいいという情報がある。バックアップデータを移⾏するにはどうすれば良いか。
・XFSを利⽤するとImmutable(書き換え不可)にできるらしい、既存のバックアップデータがランサムウェア対策になるようにしたい。

1.2. バックアップデータをどこへでも移動可能

VBR v12では、バックアップファイルの移動、コピー機能がメニューに組み込まれました。リポジトリとよばれる保存先にバックアップファイルが保存されますが、今回の機能を利⽤することで、リポジトリ間のバックアップ移動・コピーが可能になりました。この機能は、ReFS、XFSで構成されたリポジトリに対してオペレーションすることで最⼤限に効果を発揮します。

1.3. ReFSXFSのメリット

VBRのリポジトリとして利⽤できるファイルシステムはいくつかありますが、ReFSまたはXFSを利⽤することにより、Fast Cloneを利⽤することができます。また、XFSの場合は、Immutableリポジトリとして設定することも可能になります。なお、ReFSはVBR v9.5から、XFSはVBR v10からそれぞれサポートされています。

1.3.1. Fast Cloneとは

Fast Cloneは、効率的に合成フルバックアップを作成する機能です。VBRの基本的なバックアップ⽅式は、初回にフルバックアップを取得し、その後は永久増分となります。バックアップデータは、永久存分だけだと無限に増えていきますので、⼀週間に⼀度、直近のフルバックアップと増分バックアップからフルバックアップを作成する処理を⾏います。この処理で作成されるバックアップを合成フルバックアップといいます。通常の合成フルバックアップの処理は、関連するバックアップファイルを全て読み込み、それを元にフルバックアップを合成して、ファイルを書き出します。そのため、バックアップファイルが⼤きければ、時間がかかります。
Fast Cloneによる合成フルバックアップの場合は、ファイル間でデータをコピーするのではなく、ボリューム上の既存データブロックを参照します。そのため、⾼速に合成フルバックアップの作成ができます。また、データブロックの参照のみなので、ファイルの全体をコピーするのに⽐べて、ファイルシステム全体の使⽤量を減らすことができるメリットがあります。

1.3.2. Immutable リポジトリとは

Imutableリポジトリとは書き換え不可のリポジトリとなります。書き換えられないのでRansomwere対策に有効な⼿段の⼀つです。LinuxのXFSファイルシステム上でのみ利⽤できます。Immutableについては、本稿では詳しくは触れません。詳しくは、こちらをご参照ください。

1.4. ReFSXFSへのファイルの移動・コピー

VBR v11までは、バックアップジョブに関わりないバックアップファイルの移動やコピーは、OSの機能を利⽤して⾏う必要がありました。単純に⾔えば、copyコマンドなどでファイルを移動させて、その後、移動先をリポジトリとして登録し、スキャンするとVBR上からバックアップとして利⽤することができました。


この場合、どのファイルシステムからコピーしても、ファイルの実体がコピーされるため、ファイルシステムの必要領域は、ファイルサイズと同です。ReFSから合成フルをコピーするときも、データブロックの参照先の実体をコピーすることになります。これでは、ReFS、XFSのメリットを活かすことができません。

繰り返しになりますが、VBR v12からは、VBRの機能として、単独のバックアップファイルの移動、コピー機能が追加されました。リポジトリ間の移動やコピーで追加された機能を利⽤すると、Fast Cloneが有効になります。つまり、合成フルは、データブロックの参照で作成されることになり、ディスクの使⽤効率向上につながります。

1.5. バックアップデータのコピー

例としてバックアップデータをリポジトリ BR01(NTFS)かリポジトリ BR02(ReFS)にコピーしてその結果を⽐較しま
す。

  1. Veeam Backup & Replication Console を起動します。
  2. バックアップファイルのコピーを⾏うには、左ペインでHome -> Backups -> Disk を選択してコピーしたいバックアップファイルを選択し、マウスの右ボタンを押します。すると、以下のメニュが表⽰されます。

3. “Copy backup” を選択します。

4. ダイアログボックスが表⽰されますので、コピー先のリポジトリを選択します。なお、今回は、BR01からB02の
コピーとなります。”OK”を押すと次のダイアログボックスが表⽰され、処理が開始されます。

5. コピー処理のメッセージの中にFast Cloneという⽂字が確認できます。以上でコピー処理は完了となります。作業時間もOSのコピーコマンドよりも⾼速です。

1.6. リポジトリの容量について

VBRコンソールからコピーを後の各リポジトリの容量を確認画⾯が以下の通りです。”Used Space”は同じですが、BR02つまりReFSリポジトリのほうが20GB程度、”Free”が多いことがわかります。実際に、OSからリポジトリ状態を確認してみてもReFSのほうが空き容量が多いのがわかります。

1.7. バックアップデータの移動

バックアップデータをReFSリポジトリに移動するときは、”move backup”を選択します。バックアップデータの移動完了後、バックアップジョブのリポジトリも⾃動的に移動先のリポジトリに変更されます。BR01からBR02に移⾏した場合のジョブ設定は、以下のように変更されます。

バックアップジョブ管理の編集

1.8. まとめ

今回の事例では、ReFSへの移動・コピーを取り上げましたが、XFSのリポジトリに対しても同じ効果があります。
ReFSやXFSを利⽤するとFast Cloneによる合成フルの⾼速化に加えて、ディスク使⽤量の削減効果もあります。また、本稿では詳しくは触れませんが、オブジェクトストレージ上に設定したリポジトリにも移動・コピーが可能となります。

VBR v12では、この他にも様々な機能が強化されています。このブログでご紹介していきますので、チェックしてご⾃分の業務に有効活⽤していただければ幸いです。

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