Veeam による VMware VM のレプリケーションレプリカのフェイルオーバーについて知っておきたいこと

私がこれまで連載してきた特集ブログ記事「レプリケーション 101 シリーズ」の最後を、Veeam Backup & Replication v8 (Veeam Availability Suite v8の一部) で使用可能な VMware VM レプリカからの復元オプションの概要の説明で締めくくりたいと思います。この記事では、計画済みフェイルオーバーやフェイルオーバー プランなど、災害復旧 (DR) の自動化に役立つフェイルオーバーの基礎知識について解説します。この記事をお読みいただくと、クリティカルなアプリケーションを障害やダウンタイムから保護する方法を理解することができます。

VM レプリカへのフェイルオーバー

レプリカのフェイルオーバー とは、損傷または障害の本番 VM を遠隔地にあるレプリカに切り替えることです。レプリケートされた VM は、使用可能な状態で保存されるので、フェイルオーバーにはわずか数秒しかかからず、即座に VM の電源を入れることができます。レプリカは、ソース VM とまったく同じ構成なので、追加の構成を行ったり、余分な設定を適用したりする必要はありません。フェイルオーバーを開始するには、必要な VM のレプリカを右クリックし、[Failover Now (今すぐフェイルオーバー)] を選びます。そうすると、フェイルオーバー ウィザードが開始します。

レプリケーションの保持期間をカスタマイズすることができ、すべての VMware VM レプリカについて最大 28 の復元ポイントを保持することができます。レプリカにフェイルオーバーする時、Veeam Backup & Replication は、デフォルトで最新の復元ポイントを選択します。ただし、それより以前のレプリカをロールバック対象として指定することができます。これは、ソフトウェアの障害等で最新のレプリカ復元ポイントが破損し、以前の破損していない復元ポイントにフェイルオーバーする必要が生じた場合に役立ちます。

次のステップを決定する

フェイルオーバーをコミットすると、VM レプリカが障害状態の本番サーバーに置き換わります。パフォーマンスは、DR サイトの構成によって異なります。低パフォーマンスのストレージまたは帯域幅が不十分な場合、VM レプリカで実行中のアプリケーションが遅くなる可能性があります。このため、Veeam Backup & Replication では、フェイルオーバーは一時的な状態に留め、ユーザーによってプロセス完了する必要があります。DR サイトに十分なリソースがある場合、永久フェイルオーバーを実行することで、ワークロードを恒久的に DR サイトで実行し、本番 VM を完全に置き換えることができます。この場合、Veeam は、すべての対応する復元ポイント (VM スナップショット) を削除し、元の VM をレプリケーション ジョブから除外します。これにより、変更が、レプリカから作成された新しい本番 VM に影響を与えることはありません。

DR サイトに十分なリソースがなく、永久フェイルオーバーを選択できない場合、稼働するレプリカから元の VM に戻ることができます。メイン サイトの問題が解決した時点で、フェイルバック操作を実行します。Veeam Backup & Replication は、レプリカと元の VM の両方で変更を自動的に同期させるので、元の VM にフェイルバックするか、または新しい宛先を選択することができます。フェイルバックでは、フェイルオーバー イベント以降に変更されたデータのみを転送するというインテリジェントな方法でデータが転送されます。これにより、大幅に時間を短縮できます。

依存関係のあるアプリケーションの場合

クリティカルな仮想化アプリケーションの大半は、環境内の他のサービスと相互に依存関係があります。たとえば、Microsoft Exchange、Active Directory および SQL は、ドメイン コントローラー、DNS および DHCP サーバーと相互に依存関係があります。依存関係のあるアプリケーションの可用性は、これらの相互関係によって決まります。大規模な障害が発生した場合、適切なパフォーマンスを確保するために、これらのサーバー グループ全体を復元し、それぞれを適切な順序で起動する必要があります。

Veeam Backup & Replication v8 では、同時または特定の順序で起動する必要がある VM グループに対して、あらかじめ順序を定義するフェイルオーバー プランを作成することができます。緊急時には、保存したフェイルオーバー プランをワンクリックで開始するだけで済みます。さらに、Veeam の Web UI を使用してタブレットからリモートでフェイルオーバー プランを実行することさえできます。Web UI は、Veeam Backup Enterprise Manager コンポーネントをインストールすることにより、使用できます。

フェイルオーバー プランは、フェイルオーバー前とフェイルオーバー後のスクリプトの実行をサポートします。最も一般的なシナリオの場合、スクリプトは、フェイルオーバー後、同じフェイルオーバー プランから別のアプリケーションが起動する前に、アプリケーションを停止または一時停止するのに役立ちます。たとえば、ドメイン コントローラー (DC) を起動する場合、スクリプトを使用して、キュー内の次のアプリケーションを停止させることができるので、先に実行中の DC からハートビートを取得できます。フェイルオーバー プランのフェイルオーバー前およびフェイルオーバー後のスクリプトとしては、BAT、CMD および EXE ファイルを使用できます。

技術的には、フェイルオーバー プランにグループ化されたアプリケーション レプリカへのフェイルオーバーは、通常のフェイルオーバー プロセスと同じ方法で実行されます。つまり、最新の有効な復元ポイントにロールバックし、フェイルオーバーが完了した時点で、永久フェイルオーバーまたはフェイルバック手順を使用して、プロセスを完了させる必要があります。

データセンターの移行および計画済みメンテナンスに VM レプリカを使用する

ハードウェア、ホストまたは VM がいつダウンするかはわかりませんが、データセンターのメンテナンスなどによる計画済みのダウンタイムは事前に把握できます。Veeam Backup & Replication は、計画済みフェイルオーバー シナリオをサポートします。これは、移行やメンテナンス操作を円滑に進め、ユーザーの作業に対する影響を最小限に抑えるのに役立ちます。計画済みフェイルオーバーは、本番 VM を停止する前に、レプリカを使用してワークロードを本番 VM から DR サイトに切り替えます。データは一切消失しません。

動作のしくみ通常通り、必要な本番 VM を新しい場所にレプリケートし、移行やメンテナンスを開始できる状態になったら、計画済みフェイルオーバー ウィザードを実行します。予期しないダウンタイムで実行する通常のフェイルオーバーとは異なり、計画済みフェイルオーバーは、最後のレプリケーション ジョブが実行されて以降に発生したソース サーバーのすべての変更をレプリカに同期させます。ウィザードの実行が完了すると、Veeam Backup & Replication は、レプリカへのフェイルオーバーを実行すると同時に、ソース VM を停止します。

テスト目的で VM レプリカを使用する

クリティカル アプリケーションのパッチ適用、アップグレードおよびソフトウェアの修正は、システム障害を招く危険性があります。このため、常にすべての変更を、本番環境で適用する前にテストする必要があります。Veeam のレプリケーションは、このようなテストを行うのに役立ちます。構成を追加したり、テスト ラボを作成したりする必要はありません。レプリカにフェイルオーバーし、実行中の VM クローンで、必要なテストを実行するか、またはパッチを適用するだけです。完了したら、安全にフェイルオーバー状態を取消し、本番 VM をフェイルオーバー前の状態に戻すことができます。フェイルオーバー状態で発生した VM への変更はすべて破棄され、本番 VM は再び通常モードで動作するようになります。

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