Microsoft 365は、世界中のほぼすべての企業の生産性において欠かせない要素となっています。そのため、データを安全に維持することがこれまで以上に重要になっています。ランサムウェアを初めとする脅威が増える中、組織はデータを保護するだけでなく、インシデント発生後にMicrosoft 365組織全体を迅速に復元できる信頼性の高い方法を必要としています。従来のバックアップには常に制限があり、スロットリング、帯域幅、データサイズのすべてが、データのリストア速度を左右します。Microsoftのファーストパーティのバックアップ製品である Microsoft 365 Backup のリリースは、スロットリングやその他のパフォーマンスの阻害要因による制限を受けないソリューションであるため、組織のランサムウェアによるデータ損失からの復元ニーズに対して革新的な変化をもたらすものです。
このブログでは、Microsoft 365 Backupの主な機能を詳しく解説し、VeeamのようなバックアップベンダーがMicrosoft 365 Backup Storageで付加価値を構築する方法もご紹介します。
Microsoft 365 BackupとMicrosoft 365 Backup Storageの背景
2023年11月15日、Microsoft Igniteで、MicrosoftはファーストパーティのMicrosoft 365バックアップソリューションであるMicrosoft 365 Backupを発表しました。このソリューションの目的は、ますます増加するランサムウェア攻撃やセキュリティ脅威に対処するために、迅速かつ大規模な復元に対するニーズの高まりに対応することでした。Microsoftは、お客様の多様なニーズを認識したうえで、新しいバックアップAPIと統合するために、Veeamおよびその他のバックアップ分野の5社とパートナーシップを結ぶことも発表しました。このパートナーが提供するサービスはMicrosoft 365 Backup Storageと名付けられました。
2024年7月31日、MicrosoftはMicrosoft 365 Backupを正式にリリースし、VeeamもMicrosoft 365 Backup Storageの導入を発表しました。Microsoft 365 Backup Storageは、そのバックアップサービスである Veeam Data Cloud for Microsoft 365 およびその2つのプラン (Veeam Data Cloud for Microsoft 365 ExpressおよびPremium)内に組み込まれています。Veeamは、この統合化Microsoft 365 Backup Storage製品を積極的にお客様に提供した最初のバックアップソリューションであると自負しています。
Microsoft 365 Backup Storageでできること
Microsoft 365 Backup Storageは、企業が重要なデータを保護するうえで欠かせない機能をいくつか備えています。
- 主要アプリケーションのバックアップ:Microsoft 365 Backup StorageはExchange Onlineのバックアップとリストアを完全にサポートします。また、SharePoint OnlineとOneDrive for Businessの広範なバックアップサポートも提供します。
- 低い目標復旧時点(RPO):バックアップは定期的な頻度で実施され、最初の2週間はOneDriveとSharePointに対して10分ごとにバックアップが行われます。この2週間が経過すると、1週間ごとに1つのバックアップが保持されます(つまり、1週間のRPO)。Exchangeのバックアップは10分ごとに実行されます。
- エンタープライズスケールでの一括リストア:Microsoft 365 Backup Storageでは、1つのリストアジョブで複数のメールボックス、複数のSharePointサイト、複数のOneDriveユーザーをすべて復元することができます。
- 高速バックアップと復元:Microsoft 365 Backup Storageは大容量のデータ向けに最適化されているため、1時間あたり1TBを超える高速バックアップと復元が可能です。スロットリングによってパフォーマンスが影響を受けることもありません。たとえば、保護ユニットあたり1,000のOneDrive、SharePointサイト、またはメールボックス(15〜30GB)の大規模なリストアは、1時間あたり1〜5TBの速度で実行されます。
これらの機能はデータ保護の強固な基盤となりますが、一般提供開始時点では含まれていない機能もいくつかあります。これらの機能の多くは、今後数か月以内に追加される予定です。
Microsoft 365 Backup Storageが一般提供開始時点で有していない機能
どのソリューションにも成長の余地や改善の余地があり、Microsoft 365 Backup Storageも例外ではありません。ここでは、いくつかの追加機能を採用することでメリットが得られる分野を紹介します。
- Teamsのサポート:今では多くの組織にとって、Teamsのバックアップは必須となっています。このため、大多数の管理者は、Microsoft 365 Backup StorageでTeamsのバックアップが利用できるようになるのを心待ちにしています。
- 保持期間の柔軟性:現在、Microsoft 365 Backup Storageは最長1年間のデータ保持をサポートしています。これは多くのユースケースで十分な期間ですが、組織によっては、より長い保持期間を必要とするコンプライアンスまたはビジネスニーズがある場合があります。データを数年以上保持する必要がある場合、保持ポリシーを調整できる柔軟性は、将来のアップデートで役立ちます。
- きめ細かいリストアのオプション:Microsoft 365 Backup Storageは、大規模なデータのリストアにも効率的に対応できるように構築されています。ただし、きめ細かいリストアのオプションは、現在Exchangeのみに制限されています。一般提供開始時点では提供されませんが、残りのアプリケーションに対するきめ細かいリストアオプションについては、今後対応する予定です。
- セルフサービス・リストア機能:現時点では、Microsoftのネイティブソリューションには、エンドユーザー向けのセルフサービス・リストア・ポータルは含まれていません。従業員がIT部門の介入なしにデータを直接復元する方法を提供することで、時間の節約とIT部門の負担の軽減を実現し、日常業務をより効率的に行うことができます。
- ストレージリージョンの柔軟性:現時点では、Microsoft 365 Backup Storageでは、バックアップストレージとしてAzureリージョンを選択することはできません。このレベルの選択肢は、特に特定のデータ保存場所や規制要件を持つ組織において、データの主権性を維持するのに役立ちます。
VeeamがMicrosoft 365 Backup Storageを補完する方法
データ保護における定評あるリーダーであるVeeamは、Microsoft 365 Backup Storageを補完するために、これらの欠けている部分に対処し、新しい機能を追加して、より多様なニーズを抱える組織向けにカスタマイズされた堅牢なソリューションを提供します。
1.包括的なアプリケーションサポート
Veeamでは、Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive for Business、Microsoft Teamsを初めとする主要なMicrosoft 365アプリケーションについて、完全かつカスタマイズ可能なバックアップときめ細かい復元が可能です。
2.ソースからのバックアップの分離
Veeamでは、バックアップを最初のテナントから分離して、それを別のAzureテナントに保存できます。これにより、完全なアクセスと制御が実現し、コンプライアンス要件をより適切に満たすことができます。
3.業界をリードするリストアオプション
Veeamは市場で最も柔軟できめ細かい検索および復元オプションを提供します。リストアは、ファイルレベル、ユーザー間、および代替場所に対して実行することができます。元のメールボックス、別のメールボックス、元のフォルダ、または別のフォルダにデータをリストアすることもできます。
4.拡張保持
規制の厳しい業界など、長期的なデータ保持のニーズがある組織では、Veeamの長期保持オプションが特に有効であることがおわかりになるでしょう。Microsoft 365 Backup Storageは最長1年間の保持をサポートしていますが、Veeamでは、保持期間をカスタマイズしてデータを恒久的に保存することが可能です。これにより、企業はコンプライアンス要件を満たし、潜在的なペナルティを回避できます。
5.包括的な監視とインサイト
Veeamは、組織がバックアップ環境全体をより明確に把握できるようにする強力な監視と分析ツールを提供します。これらのツールを使用すると、ITチームはパフォーマンスを監視し、潜在的な問題を深刻化する前に特定し、バックアッププロセスの最適化により効率向上を図ることができます。
Microsoft 365 Backup Storageを基盤としたVeeamの高度なセキュリティ機能の拡張
Microsoft 365 Backup Storageはセキュリティで保護された基盤を提供し、Veeamはその上に高度なセキュリティ機能を追加しています。
- マルチファクター認証(MFA):VeeamはMFAをサポートすることでセキュリティをさらに強化しており、バックアップデータにアクセスできるのは権限を有する人員に限定されます。
- ロールベースのアクセス制御(RBAC):組織はこの機能を使用して、特定のロールや権限を定義し、バックアップデータへのアクセスや変更が可能なユーザーをよりきめ細かく制御できます。
- IPアドレスのアクセス範囲:コンソールにアクセスできるIP範囲を制御します。これにより、悪意のあるユーザーがアクセスを試みるリスクが軽減されます。
- セキュリティグループオブジェクトの保護:セキュリティグループ内のユーザーを追加された時点で自動的に保護し、保護されたユーザーを時間単位で更新します。
これらのセキュリティ強化は、サイバー脅威が絶えず進化している今日の環境では特に重要です。
両者の長所を活用:スピードとスケール、コントロールと柔軟性の実現
Veeam Data Cloud for Microsoft 365とMicrosoft 365 Backup Storageがより効果的に統合されています。このソリューションにより、組織はカスタマイズ機能/柔軟性を超高速のスピード/スケールと組み合わせることで、完璧なバランスでデータ保護のニーズを達成することができます。
このようにVeeamの機能とMicrosoft 365 Backup Storageの統合により、規模の大小を問わず、あらゆるデータ消失やサイバー攻撃が発生した際に迅速に復元することが可能です。迅速なファイルレベルのリストアも、Microsoft 365環境全体の完全復元も、この複合ソリューションで対応可能です。
結論:VeeamでMicrosoft 365 Backup Storageを強化
Veeam Data Cloud for Microsoft 365とMicrosoft 365 Backup Storageの統合により、スピード、セキュリティ、柔軟性の完璧な組み合わせを実現できます。データ保護戦略の強化を検討しているITリーダーにとって、この統合は、今日のビジネスのさまざまなニーズに対応できる、適応性のある包括的なソリューションです。
Veeam Data Cloud for Microsoft 365がどのようにして組織のデータ保護の取り組みを強化できるかについての詳細はこちらをご覧ください。